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| 泉 忠行 |
(社)浄化槽システム協会講師団 |
(月刊浄化槽 2012年1月号) |
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1.はじめに
ディスポーザー(Disposer)は、台所の流しに取り付けて、生ごみを水で流しながら細かく砕き、排水と共に下水道などに流す電気製品である。
近年、住宅産業の低迷から、戸建や集合住宅の付加価値を高める目的で、ディスポーザーを設置する事例が大都市を中心に増えている。しかし、悪臭や害虫の発生を防ぎ、ごみ出しの手間が省けるなど便利な機械であるにも係わらず、その普及の速度は米国などに較べて遅い。
当協会でも、10年程前から、ディスポーザーとその処理槽を複数の会社が製品開発をし、生ごみ処理の新しいシステム創りに努力をしているところである。年初にディスポーザーと排水処理槽の早期普及を願いつつ、ディスポーザー使用の功罪について記述する。
尚、「ディスポーザ」との表記も多いが、拙文では一般的な「ディスポーザー」を用いた。 |
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2.歴史
ディスポーザーは1927年(昭和2年)に米国で発明され、第2次世界大戦後の1950年(昭和25年)頃から、その利便性が受けて急速に普及が進み、現在、米国ではディスポーザーの無い家庭の方が珍しいくらいになっている。
我国では、ディスポーザーは昭和30年頃から輸入され始め、昭和62年頃までに国産品を含め、約30万台が販売されたと報告されている。
しかし、その頃に、モグリ業者による悪質商法や排水での環境破壊が社会問題化すると、全国の自治体でディスポーザーの使用禁止や自粛が始まり、やがて、一時期殆ど販売されなくなった。
その間の平成2年頃に、ごみ問題の顕在化や貿易摩擦の関係で、輸入品のディスポーザーが着目されるようになり、平成6年から8年にかけて、旧建設省で「ディスポーザーによる生ごみリサイクルシステムの開発」が検討され、ディスポーザー排水処理システムが開発された。
これを受け、平成9年には(財)日本建築センターで「ディスポーザー排水処理システムの構造評定および建設大臣認定」がスタートし、初めてディスポーザーと排水処理システムの組み合わせが公に認定される仕組みが完成した。
その翌年には、建築基準法第38条に基づく大臣認定を数社が取得し、ディスポーザーとシステムの販売を始めた。
現在は、法改正によりディスポーザー排水処理システムの大臣認定制度は廃止されているが、(社)日本下水道協会「下水道のためのディスポーザー排水処理システム性能基準(案)」に引き継がれ、ディスポーザーと排水処理システムがセットで、第三者機関による適合評価が実施されている。 |
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3.構造と形式
ディスポーザーの基本的な構造は、円筒内壁に固定された固定刃とモーターで駆動する回転円盤で構成され、厨芥の破砕は円盤上のハンマー(カッター)および固定刃による衝撃、せん断により行われる。ディスポーザーの構造例を図-1に示す。
米国などでは蓋なしで、厨芥を続けて投入できる連続式が多く、我国では、厨芥をバスケットに一旦溜めてから蓋をすると破砕を開始するバッチ式も多い。これは初めてディスポーザーを使用するユーザーが多く、処理のスピードより安全性を選択した結果と考えられる。
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4.排水の水質
ディスポーザーでは、野菜、魚、果物などの屑を処理するが、金属、プラスチック、陶器、大きな骨、貝殻、蟹の殻のような硬いものやゴム類、ラップ、ビニール、紙類やトウモロコシ、タケノコなどの皮のように軟らかく引きちぎり難いものは、本体の故障、配管の詰まりの原因となるので処理はできない。
一般家庭から排出される厨芥の原単位は、居住地域や家族構成などで多少ばらつくが、250g(湿潤)/人・日とされている。この値を基に、ディスポーザー排水(水量5L/人・日)、台所排水(30L)、ディスポーザーありの台所排水(合計35L)及び処理槽からの排水(同35L)の設計水質を表-1に示す。この表から、台所にディスポーザーを設置した場合、汚濁負荷(BOD)量は約2.5倍に増加するが、これに処理槽を設けると逆に約40%減少することがわかる。
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5.下水道への影響
下水道敷設地域の家庭に、ディスポーザー単体を設置した場合の下水道への影響調査としては、国土交通省が平成11年度から14年度にかけて北海道歌登町で実施した社会実験の報告がある。それによれば、
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管渠の逆勾配区間で、卵殻由来と推定される堆積物の増加が観察された。 |
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ディスポーザー設置率36%では、下水処理場の流入水量や流入水質への影響は、明確には認められなかった。 |
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汚泥発生量については、ディスポーザーの普及率に連れて若干の増加傾向が見られた。 |
などの、報告がなされている。
現在、殆どの自治体でディスポーザー単体での使用を禁止しているが、例外的に、処理場の能力に余裕がある。管渠が十分整備されている。などの理由により、ディスポーザー単体での下水道放流を認めている自治体が10箇所程ある。 |
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6.排水処理の形態
ディスポーザーからの排水は、下水道または下水道以外の公共用水域に放流される。
放流先が下水道の場合は、ディスポーザーと下水本管の間に、ディスポーザー排水処理システム(図-2)を設置する必要がある。処理の方法は、ディスポーザーで破砕された厨芥を機械的に分離、乾燥する方式もあるが、浄化槽と同じ、微生物の浄化作用を利用したものが殆どである。処理性能は、先の性能基準(案)のBOD300mg/L以下、SS300mg/L以下、n-ヘキサン抽出物30mg/L以下であるので、大方の下水道へは接続が可能である。
集合住宅用ディスポーザー排水処理システムの出荷実績は、ディスポーザ生ごみ処理システム協会の資料によれば、図−3の通り、平成22年度は31,230戸で、最盛期の約半分となっている。
尚、ディスポーザー排水処理システムから発生する汚泥の取り扱いについて、法的には不透明で、自治体毎に一般廃棄物とするか、産業廃棄物かで判断が分かれていた。しかし、平成15年の全国廃棄物・リサイクル行政主管課長会議で、「一般廃棄物である生ごみを処理した結果生じたものであり、一般廃棄物に該当する。」との見解が示され、これに倣う自治体が多くなった。
次に、放流先が公共用水域の場合は、過去に、BOD200mg/L以下の性能のディスポーザー排水処理システムを通常の合併浄化槽に前置する方法も採られたが、平成16年に(財)日本建築センターの浄化槽性能評価方法に、「ディスポーザー対応浄化槽に関する規定の整備、明確化」が追記された。この事により、大臣認定を取得した、し尿とディスポーザー排水を含む雑排水を併せて処理する形式の浄化槽、「ディスポーザー対応浄化槽」のみが設置できることになった。
図-4に、大臣認定を取得したディスポーザー対応浄化槽の構造例、表-2に処理性能を示す。
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7.導入のメリットとデメリット
ディスポーザー導入のメリットとしては、ディスポーザー排水処理システムと下水道及び対応浄化槽を活用した新しい生ごみ収集システムを構築することにより、第一には高齢者や身障者を含む住民のごみ出し労力の削減が挙げられる。また、住居やごみ収集場などの環境改善、具体的には臭気の軽減、カラス、ねずみ、ゴキブリなどの排除が挙げられる。更に、下水処理場では、汚濁負荷の削減、生ごみ由来の汚泥からのメタンガス回収とエネルギー転換。ごみ処理場では、水分を多く含む生ごみ量の減少に伴う高温焼却によるダイオキシン発生量の抑制、併せて省エネ化などが挙げられる。
デメリットとしては使用者のごみ削減意識が希薄になる恐れがあることや、利便性の対価として、ディスポーザー及び処理システムのメンテナンス費用が発生することくらいである。 |
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8.おわりに
ディスポーザーの普及に関しては、国レベルではあまり積極的でないと感じている。確かに、処理槽システム(対応浄化槽)なしでは、下水管渠や処理場への影響、ごみ削減、リサイクル意識の低下の問題は懸念されるであろう。
しかし、述べてきたように処理槽付きディスポーザーであれば乱暴な使用の償いは、直接使用者にはね返ってくるので、「ナンでもカンでも下水道に流してしまえ!」的なモラルの低下は心配しなくても良いのではないか。また、家庭から生ごみが殆ど消えるので、ごみの分別精度も上がるのではなかろうか。
ディスポーザーの普及で全てのごみ問題が解決するとは思わないが、少なくとも生ごみ処理の問題の大部分は解決すると確信している。
最後に、国民の水洗トイレへの願望が浄化槽普及の原動力となったように、ディスポーザー使用願望が既設(住宅)単独槽の合併転換へも繋がれば、一石二鳥と願うところである。 |
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参考資料
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「シンク下で生ごみ破砕 広まるかディスポーザー」(東京新聞2011年9月29日) |
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「環境にやさしいディスポーザの使い方」(特定非営利活動法人 ディスポーザ生ごみ処理システム協会) |
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「下水道のためのディスポーザ排水処理システム性能基準(案)」(平成16年3月(社)日本下水道協会) |
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「高濃度生活排水等の受け入れ基準に関する調査」(平成14年度 下水道関係調査研究年次報告集) |
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「ディスポーザー普及時の影響判定の考え方(案)」(平成14年5月国土技術政策総合研究所下水道研究部) |
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「単体ディスポーザーに対する考え方」(自治労公営企業評議会下水道部会 山本善久) |
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「ディスポーザ取扱説明書」(マックス株式会社) |
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国土交通省、(財)茨城県薬剤師会公衆衛生検査センターほかホームページ |
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| (株式会社ダイキアクシス 生産部 主査) |
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