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単独転換のススメ
足立 清和 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2021年1月号)
1. はじめに
2. 浄化槽の設置基数の推移
3. 単独処理浄化槽の劣化と寿命について
4. 単独処理浄化槽の環境負荷
5. おわりに
1.はじめに

 今般、浄化槽法の一部を改正する法律(令和元年法律第40号)が施行され、その中で、特定既存単独処理浄化槽の措置に関する規定が追加された。特定既存単独処理浄化槽とは、既存単独処理浄化槽であって、そのまま放置すれば生活環境の保全及び公衆衛生上重大な支障を生ずるおそれがあるものとされており、行政の立入検査を通じて特定既存単独処理浄化槽の判断が実施され、補修または合併処理浄化槽へ更新されることとなる。

 歴史的には、1960年頃から国民の生活水準の高まりと共に水洗便所に対する要求が大きくなる中、単独処理浄化槽は急速に普及した。その後、トイレ以外の雑排水を含めた汚水を適切に処理する合併処理浄化槽が普及され、そして2000年以降は単独処理浄化槽の新設が禁止となった。それ故に現在では、既存単独処理浄化槽は水環境保全の観点からは万全なものとは言えない状態となっている。

 汚水処理の10年概成の目標を達成するためには、単独転換は大きな課題であり、今後実施される立入検査が単独転換のきっかけとなるよう関連情報をまとめた。
 
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2.浄化槽の設置基数の推移

 図-1に浄化槽の設置基数の推移をまとめた。単独処理浄化槽は、1969年に全国一律の基準となった旧構造基準型と1980年に改正された新構造基準型がある(1969年以前のものは旧構造基準として整理)。旧構造基準の単独処理浄化槽は1969年以降、新構造基準に改正されるまでおよそ30万基/年のペースで増加し、その後減少した。そして1980年以降、新構造基準の単独処理浄化槽が同様におよそ30万基/年のペースで増加し、2000年以降減少している。

図-1 浄化槽設置基数と汚水処理人口普及率の推移(環境省データを整理)

 合併処理浄化槽は、1990年頃から水環境保全の観点から基準型が徐々に増加し(最大約20万基/年)、2002年以降は基準型に代わり大臣認定型が同様のペースで増加している。大臣認定型は、2000年頃から普及が進み、2005年には浄化槽出荷基数の90%を超え、現在では更に大臣認定型の割合が増え100%近くとなり、基準型の出荷基数はごく僅かとなっている。

 設置基数の減少に着目すると、旧構造基準の単独処理浄化槽は、1980年に新構造基準に切り替わって以降、およそ9万基/年のペースで減少し、新構造基準の単独処理浄化槽は、2000年に単独処理浄化槽が廃止されてからおよそ10万基/年のペースで減少している。2019年の単独処理浄化槽の残存基数が、旧構造基準91万基、新構造基準290万基となっていることから、同様の減少傾向が続けば(近年は減少傾向が緩やかになっている)、単独処理浄化槽の設置基数が無くなるまでに30年以上かかると推測される。汚水処理の10年概成を実現させるために、単独転換の啓発を更に進める必要があると考えられる。

 一方、構造基準型の合併処理浄化槽の設置基数は、大臣認定型の割合が90%を超えた2005年以降、新規設置が殆ど無い中で若干の減少傾向に留まっていることから、恒久的な汚水処理システムとして使用されていることが分かる。
 
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3.単独処理浄化槽の劣化と寿命について

 浄化槽本体の耐用年数は、2002年の汚水処理整備策定マニュアルにてFRP製浄化槽の使用実績から30〜50年(補修含む)とされたが、それ以前は一般的な設備償却の観点からおよそ15年とされていた。図−1の設置基数の推移から2020年現在の使用年数実績をおおざっぱに読み解き表-1に整理した。旧構造基準の単独処理浄化槽は耐用年数を既に超過し、新構造基準の単独処理浄化槽もあと10年経過することで耐用年数を超える時期となることが分かる。

表-1 浄化槽の使用年数実績
浄化槽の分類 普及年(年) 2020年時点の
使用年数(年)
単独(旧構造基準) 1961〜1980 40〜59
単独(新構造基準) 1980〜2000 20〜40
合併(基準型) 1985〜2005 15〜35
合併(大臣認定型) 2000〜 0〜20

 老朽化した浄化槽の破損事例として図-2〜4の写真を示したが、古い浄化槽では、嵩上げが1m近くもあるものや、明らかに建物の荷重が入る施工状態で、補修しても破損が再発するのではないかと考えられるものも多い。経験的には、土圧により押されて大きく変形し破損した部位を補修しても、補修箇所が堅牢になり応力が補修箇所の端部に集中し、その部位が再び破損することがある。老朽化によりFRPの強度が低下したものは元の強度を期待することが出来ない。そのため、補修では破損箇所を直すことは出来るが、その後どの程度の耐久性があるか保証することはない。そして、補修に要する費用は、破損状況により様々であるが、槽内作業は過酷かつ危険な作業であるため高額となる。また、浄化槽の補修を行う業者も近年少なく、補修業者を手配することが難しくなっている。そうした事情を理解すると、老朽化した単独処理浄化槽が破損した場合は、これを機に合併処理浄化槽に切り替える選択肢が得策と考えられる。例えば、故障した古い自動車を数十万円かけて修理することと、これを機に新しい自動車に乗り換えることを考える場合、修理費用を新しい自動車の一部に当てた方が良いと私は考える。これと同様に考えられないか。

 また一方で、適切な施工と管理及び検査の下で維持されている単独処理浄化槽であれば耐用年数を超えて使用することも可能であるかもしれないが、はたして30年以上前の単独処理浄化槽が問題なくその機能を維持しているのか私自身で確認したことはない。補修の依頼で見聞きした情報では、本体、仕切板やマンホールの破損など外観上明らかな異常があるものについては問い合わせがあるが、機能上の問い合わせは殆ど無い。11条検査結果などで明らかに機能が維持できていない老朽化した単独処理浄化槽については、単独転換を勧めることが必要と考える。

図-2 単独処理浄化槽の破損事例
図-3 破損事例(嵩上げ約1m)
図-4 破損事例(建物荷重、電車の荷重)
 
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4.単独処理浄化槽の環境負荷

 合併処理浄化槽は、トイレ排水のBOD量13g/人/日と台所など雑排水のBOD量27g/人/日を合わせた40g/人/日を処理しBOD量として 4g/人/日以下にして放流するのに対して、単独処理浄化槽は、トイレ排水のBOD量13g/人/日を処理し5g/人/日で放流するが、雑排水の27g/人/日は未処理となるため、放流されるBOD量は32g/人/日となる。したがって、単独処理浄化槽は合併処理浄化槽に比べ、環境負荷として8倍悪い。これらのことは、単独転換を啓発するパンフレットなどで良く知られている。しかしながら、目に見えないBOD量の比較は、一般人にはイメージが伝わりにくいと考え、それらにどのような違いがあるか、私の経験から以下の記述を試みた。

 例えば、台所排水や洗濯排水が側溝に垂れ流しになっていることを想像すると、私が小学生の頃、通学途中の側溝にふやけたうどんのカスや野菜屑など残渣が漂っていたことや、洗濯排水の泡が流れていたことを思い出します。側溝はドブ臭がありいつも不衛生な状態でした。最近の台所シンクは、排水口にメッシュがあり食品残渣が流れることは少ないかもしれませんが、台所の排水系統に設けられた升を開けると油脂類が溜まっていることが分かります。図-5〜6に升の写真を示しました。升の構造と使用状態にもよりますが、1年間でレジ袋にずっしり入るぐらいの油脂が回収されます。もしも、これらの油脂や残渣が原因で近隣の側溝を汚していたら近隣の迷惑になると思います。

図-5 台所排水の升 図-6 升に設けられたメッシュ
 
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5.おわりに

 単独転換が啓発されるようになってから一定の効果が見られるが、10年概成の目標を考えると更なる取り組みが必要と考えられる。設置スペースの問題や入れ替え費用など難しい面もあるが、共同浄化槽の考え方などで敷地内のスペースに関係なく実施できる単独転換をも考慮しながら柔軟に、そして積極的に単独転換を推進することが必要と考える。
 
(アムズ(株) 技術推進部)
 
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