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サーキット場の浄化槽の維持管理について
大屋 雅英 (株)西原ネオ (月刊浄化槽2012年12月号)
1.はじめに
2.施設概要
3.処理方式の特徴
4.4基本的な運転方法
5.低負荷(通常時)の運転方法
6.高負荷時(小〜大規模イベント時)の運転・対応方法
7.最大負荷時(最大イベント時)の運転・対応方法
8.維持管理について
9.改善点と対応
10.おわりに
 
1.はじめに

  日本では1960年代から本格的なサーキットの建設が始まり、現在では小規模のものを含めると全国のいたるところに開設されている。紹介するサーキット場は大規模に属するもので、年間に50回以上のイベントが行われている。サーキット場はイベントの開催時と非開催時において極端な流入負荷変動があり、施設の構造や管理方法について考慮する必要がある。
  今回は、そこに設置されている浄化槽についての施設概要・処理方式の特徴・維持管理手法などを中心に所見を述べる。
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2.施設概要

  サーキット場の全面改修に伴い、浄化槽についても2008年6月に新設となった。浄化槽の施設計画では、接触ばっ気法や長時間ばっ気法なども検討されたが、水量の増減に対して自由度の高い回分式活性汚泥法に3次処理(凝集沈殿処理)が付加された方式が採用された。さらに本施設は、過大な水量変動に対応するため、@最大で3,105m3汚水を貯留できる予備貯留槽を設置、A回分槽を2系統に分けているなどの対策を取っている。
  以下に設計条件等の概要を示す。
@ 処理方式名
  回分式活性汚泥方式 + 三次処理(凝集沈殿処理)
A 設計条件
  計画処理人口・・・・11,500人
処理対象汚水・・・・生活系排水(し尿及び雑排水)
計画汚水量・・・・700m3/日
計画水量は上記となっているが、サーキット場への入場者数はイベントの開催有
無によって大きく変動するため、過去のデータをもとに以下の水量を想定している。
通常時と最大規模イベント時では35倍の水量差があり、極端な変動があることがわかる。
 
表-1 各イベント時の水量について
B 計画水質
  計画水質を表-2に示す。放流水質は、地元行政の排出水指導基準の規定に準じている。

表-2 計画水質

C フローシート
  フローシートを図-1に示す。
図-1 フローシート

D 各単位槽の容量(主要部)(表-3参照)
  汚水ポンプ槽で貯留できない水量が流入した場合、オーバーフローで予備貯留槽に移行する。これによりイベント開催時の大水量に備えることとなる。

表-3 各単位槽の容量

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.処理方式の特徴

@ 流入変動があっても、未処理でショートパスすることがない完全処理型の処理方式
A システム構造が単純
B 沈殿槽が不要なため、施設面積が小さくて済む
C 好気状態と無酸素状態を繰り返すため、糸状性バルキングの発生を抑制し、汚泥の沈降性に優れている
D 流入下水の質や量に応じて、撹拌・ばっ気・沈殿工程時間を自由に設定・制御でき、安定した処理が可能
E 独自のコントロールパネルを使用して、ばっ気工程内におけるばっ気時間を調整するなど、さらに細かい設定ができる
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4.基本的な運転方法

回分槽は、2系統に分かれていて図-2のように時間を2時間ずらして運転。
1サイクル当り4時間で回分槽の運転を行う。
標準的な運転パターンは、1サイクル当り、流入及びばっ気撹拌工程2時間、沈殿工程1時間、上澄水排出工程が1時間。

図-2 運転パターン
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5.低負荷(通常時)の運転方法

@ 流量調整機能
  大容量の予備貯留槽を使用せず、汚水ポンプ槽(約120m3)のみで対応。
A 回分槽(処理槽)の運転
 
回分槽は2槽とし、常時2槽交互運転とする。
6サイクル/日が基本となる。
汚水ポンプ槽水位によって、回分槽へのポンプ移送を制御する。その際、No.1回分槽とNo.2回分槽へ交互に移送。
汚水ポンプ槽水位が一定水位に達しない間は、回分槽への汚水の移送は無し。
回分槽への流入が無い間は、過ばっ気によって汚泥が解体するのを防止するため、回分槽のばっ気は停止。ただし、汚泥が嫌気状態となって腐敗することを防止するため、1サイクル毎に5〜10分間程度の空ばっ気を行う。
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6.高負荷時(小〜大規模イベント時)の運転・対応方法

@ 流量調整機能
  汚水ポンプ槽(約120m3)のみで対応できない流入水量があった場合、余剰分については、予備貯留槽へ移行。
A 回分槽
 
回分槽は2槽運転とし、基本的な汚水ポンプ及び回分槽の運転制御は、汚水ポンプ槽設定水位による自動運転となる。
6サイクル/日が基本となり、流入水量に応じてばっ気工程内のばっ気時間を変更することで対応。(表-4参照)
表-4 レース開催時と非開催時のばっ気時間
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7.最大負荷時(最大イベント時)の運転・対応方法
 
@ 流量調整機能
  汚水ポンプ槽(約120m3)及び予備貯留槽(約3,100m3)を最大限活用する。
最大規模イベント時の汚水ポンプ槽と予備貯留槽の運転を下記に示す。(図-3参照)。

図-3 汚水ポンプ槽と予備貯留槽の運転図

  各施設から大量の汚水が流入してくると、汚水ポンプ槽が満水になり、オーバーフローによって予備貯留槽(1)へと汚水が流入する。予備貯留槽(1)が満水になると、さらにオーバーフローによって予備貯留槽(2)へと順次、次槽へ流入し、最終的に予備貯留槽(4)まで貯留される。その間も、連続的に汚水ポンプ槽から回分槽へ汚水の移送を行っているので、流入汚水が減少すると汚水ポンプ槽の水位が徐々に下がる。一定水位まで下がった時点で、予備貯留槽(4)の移送ポンプが起動し、直接汚水ポンプ槽へ移送される。
  予備貯留槽(4)が空になった時点で、次に予備貯留槽(3)の移送ポンプを起動し、直接汚水ポンプ槽へ移送、同様に順次(2)、(1)と移送ポンプを運転して、汚水ポンプ槽へ移送する。

A 回分槽
 
高負荷時と同様。ばっ気時間は多少変更になることがある
予備貯留槽の汚水は、毎日は700m3/日で処理され数日間で空になる。
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8.維持管理について

@ 通常・小〜中規模イベント時
  週1回の巡回管理にて対応
A 大規模イベント時
  イベント開催日当日昼間常駐し、大量流入への対応を行う。
B 最大規模イベント時
 
イベント開催日前日より昼間常駐し、機器の点検、運転シーケンスのチェックと調整などを行う。
イベント開催日は昼間常駐し、大量流入への対応を行う。
イベント終了後、翌日1日は昼間常駐し、予備貯留槽の状況監視、回分槽の運転管理などを行う。
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9.改善点と対応

  過去に実施した主な改善点や対応について述べる。

@ アルカリ添加設備の増設
  流入水質は予想よりもし尿系が強く、ばっ気工程での硝化進行に伴いpHが低下した。この影響で生物活性が低下し、処理が安定しなかった。このため、アルカリ添加設備を増設した。
A 最大規模イベント開催時の流入水質
  最大規模イベント時では、食堂以外からも廃棄された酒類等を始めとした想定外の高負荷の原因となる流入があった。このため、回分槽への流入水量やばっ気時間などの調整を細かく行うことで対応した。
B ばっ気工程時に行うばっ気時間の決定
  表-4に示したばっ気時間を流入水量・水質のデータを細かくチェック、また現場での処理状況を確認しながら決定した。
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10.おわりに

  サーキット場に限らず、運動競技場など利用人数の大小に伴い流入水量が大きく異なる現場は、施設・設備・管理など多方面で対応する必要がある。今回、掲載した記事が同様の施設を管理するときに役立てば幸いである。また、今回の執筆にあたり資料提供などご協力いただいた、中村智明・須貝夏樹両氏(西原ネオ)にこの場をかりて深く感謝する。
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