HOME コンプライアンス サイトマップ
プロフィール 入会案内 会員専用ページ
浄化槽とは 浄化槽普及促進ハンドブック(令和5年度版) 行政関連 広報データ リンク集
HOME > 浄化槽とは > 技術データ > JSAだより > 排水処理装置の不具合を解決するための現場情報の提供について
しくみ
浄化槽のしくみ
最近の浄化槽の技術動向
技術データ
Q&A
JSAだより
特 集
講 座
報 告
過去掲載目次一覧
排水処理装置の不具合を解決するための現場情報の提供について
佐竹 純一郎 (一社)浄化槽システム協会講師団 (月刊浄化槽 2023年9月号)
1.はじめに
2.数値化する
3.流入水の水質・水量を把握しよう
4.関連情報を記録する
5.グラフを作る
6.写真を残す
7.動画も使う
8.自ら解決しようとして現場を見る
9.知っている情報は全て出す
10.人に伝える
11.おわりに
1.はじめに

 家庭用など生活排水を主体とした浄化槽では水質に関して改善を求められることは少ないと思われるが、汚濁負荷の高い飲食店の浄化槽から始まり産業排水処理施設など濃度の高い排水については水質を達成できない、急激に処理が悪化した、などの問題はよく起こることである。万一、排水処理施設から汚泥を公共用水域に排出してしまうと事業所の操業停止にも結び付くことから、対策を早急に講じなければならない。そういったケースで相談に乗ることがあるが、対策を考えるに値するデータが存在しないことが多々ある。常時を知らないと非常時の見極めができないし、数字を眺めただけではなかなかその変化には気づきにくいものであり、現場で起こっている現象を理解することは困難である。そのため、管理データを普段からまとめておくように指示するのであるが、そういったデータをグラフ化して報告してくれる現場担当者はなかなかいないのが実状である。そこで、不具合を解決する観点から私が見た現場担当者に実施してほしいことを以下にまとめてみた。少しでもこういった方向で現場担当者が動いていただけることを願いたい。
 
ページトップへ
2.数値化する

  まず、できる限り状況を数値化して示すことが肝要である。例えば沈殿槽にスカムが多いという管理日報の記載があったとしても、多い・少ないは主観的で人によって評価は変わってくるし、その現場ごとに多い・少ないも変わってくるものである。
 例:スカムが多い、普通、少ない⇒スカムが沈殿槽水面の70%あった。厚さが2cmだった。
   処理水はきれいだった。⇒透視度が20pあった。
 例に挙げたスカムの場合であると、量として捉えることが可能になる。これに限らずなるべく管理日報の表現には多い・少ないではなく、数値を記入できるようにしておくとまとめる際に数値化できるようになって役に立つ。グラフ化も可能となる。もちろん透視度のように最初から数値化できているものはかなりの助けになる。
 
ページトップへ
3.流入水の水質・水量を把握しよう

 ほとんどの不具合は流入水の水質・水量が設計値をオーバーすることによって起きている。しかし、放流水質は基準を守る観点から分析していることが多いのであるが、ほとんどのケースで流入水質は分析していないものである。管理の予算が限られている中ではしかたがないかもしれないが、常時どういう原水を処理しているのかを知らないと、いざというときにはそれが変化したものか以前と同じなのかで、考察する方向が大きく変わってくることになる。客先に契約水質と違うとはっきり示せることはその後の対応についても大きく影響を与えてくるので重要である。
 
ページトップへ
4.関連情報を記録する

メンテナンスに関係する情報を記録するのは当然のことと思えるが、非常時のことを考えていないと、何となく記録せずに済ませてしまい、後から考えるとあの日にこういったことがあったようなという記憶に頼らざるを得ないことがあるものである。
例:散気管を洗浄した、pH電極を洗った、移行水量を○m3/hに変えた、汚泥返送量を○m3/hに
上げた、流量調整槽に油が多く見られた、など。
 また、何か特別なことがなくても、事業所の方に変わった作業を行っていないかとか、今後行う予定がないかといった情報を入手しておくことは万一の対策を考える場合には役立つことが多い。できるだけ事業所の人と話をするべきである。事業所の人にとっては大したことの無い変化でも排水処理側では大きな影響が出る可能性もあるだろう。
なお、経緯をまとめるのは実際に見て聞いた現場担当者が記録するのが望ましい。日報に書いてあることを第三者が見てまとめるのはなかなか事実をつかみにくくしんどい作業である。
 
ページトップへ
5.グラフを作る

 数値化できた情報をそのままにしておくのは残念である。数値を見ただけではなかなか変化を見出しにくいが、グラフにすると悪化する予兆や原因の把握などに繋がる変化が一目瞭然となるケースがある。例えばばっ気槽のDOが3mg/Lであったとして、普通に見ると問題ないDOであると判断して終わりなのであるが、1ヶ月前から徐々に下がって3mg/Lになっている場合は判断も変わってこよう。それを日報の数字を眺めて判断するのはなかなか至難の業である。よほどデータを頭に入れておかないと予兆には気づきにくいはずである。
 もっと進めれば経日変化だけでなく、各指標ごとの相関グラフも作っておくとなお役に立つ。
 ただし、グラフ作りは慣れてないとなかなか難しいようである。作っていても見にくいケースも多い。表計算ソフトはExcelを使っている方が多いと思われるが、作り馴れていない人は誰かにフォーマットを作ってもらって、データのみ移し替える方法を学んでおくと楽にまとめられて活用が可能になる。
 そして管理した現場の管理日報の値はすぐに入力するのが望ましい。変化があればその場で対応するのが可能になるので、改めて出直す手間も省けるし、トラブルも未然に防げる可能性が出てくる。何より安心して次の管理を迎えられる。毎回が無理でもせめて1ヶ月に1回は月報として出力するのを習慣づけておくのもいいかもしれない。
 既に管理情報を端末から入力してクラウドで保存して活用するシステムは市販されていることから、それらを使ってもよいだろう。
 
ページトップへ
6.写真を残す

 スマホが普及したお陰で簡単に写真撮影ができるようになった。普段から多くの写真を撮っている人も多いと思う。ただし、撮るには撮っても、自分が残したい、見せたい箇所がちゃんと表現された写真になっているかどうかまで確認している人は少ないのではなかろうか。汚泥の界面を撮りたかったのに水面で反射して全く見えないとか、ピンボケの写真もある。スマホはその点その場で確認できるところがありがたい。ぜひその便利さを生かしてほしい。また、写真データもただやたらと多いだけでは見るだけでも大変である。しばらく時間が過ぎてしまうと写真を写した場所さえも分からなくなってしまう場合もあるし、何を撮りたかった伝えたかったのかを忘れてしまう場合もあろう。ファイル名を具体的に編集したり、プロパティにコメントを入れたりしておくと後々有効に生かせるし、第三者にはそれがないとただ情報の山が提供されただけに過ぎないことになる。
 写真の撮り方も工夫が必要で、例えば流動担体なども手で取って空気中で見るとほとんど生物が付着していないように見えるのに、水中に入れると薄っすらと付着しているのが確認されるケースが多い。また、担体は槽内水とともに撮影すると濁りで生物膜が確認しにくくなるので、水道水など清水を入れたプラカップに浸漬して撮影すると状況がわかりやすくなる。写真1にその例を示す。同じ担体であるが随分と印象が違うことがわかると思う。実際にはCのように生物膜は付着している。なお、近づけて撮影するのでピンボケには注意した方が良い。

A:水から取り出した担体 B:槽内水中の担体 C:清水中の担体
写真1 担体の写真
 
ページトップへ
7.動画も使う

 私は最近顕微鏡写真を動画で撮影する手法を多く活用している。それほど微生物に精通してない人間は指標微生物を見つけるのが主で、それを探すばかりでフロックの形であるとか、それ以外の微生物などがどうなっているかは注目せずに撮影している場合が多い。ツリガネムシをやっと見つけたので1枚撮影して満足すると、それが代表データになってしまい、ほとんどいなかったツリガネムシがさも優占種のような扱いになってしまうこともあり得る。そういった主観に頼って探すよりも、ビデオで撮影しながらプレパラートを動かしておけば、ツリガネムシがどのくらいいたのか、こんな微生物もいたといった情報が浮かび上がってくる可能性もあり、正当な評価につながる。その微生物が生きているか死んでいるか、活発に動き回っているか動きが鈍いかなどの情報もわかることになるだろう。
 微生物だけに限らず動くものについては動画は有効なデータになる。例えばばっ気の状況、担体などの流動状況、などが挙げられる。同時に音声も残せるので運転音なども参考にできる場合もあろう。何を撮ったのかを明確にするために音声を入れておくという手もある。
 
ページトップへ
8.自ら解決しようとして現場を見る

 産業排水処理施設などの現場の状況を見極めるのはなかなか難しいとは思うが、基本的な因果関係はわかるものが多く、自らが解決しようとして現場を見ていくと案外解決につながることが多いし、アドバイスを受けやすい。例えば、DOが低い→汚泥濃度が高いのでは?原水濃度が高いのでは?水量が多いのでは?といったことは誰でも容易に思いつくものである。そしてそれらを予め調べておくと相談者にとって有益な情報になる。確実な情報がその時点でわかっていると解決への時間が大幅に短縮される。また、不具合とは直接関係がないとしても、それらの要素を削除して考えることができれば解決に向け検討する項目を絞ることが可能になる。
 
ページトップへ
9.知っている情報は全て出す

 断片的な管理者からの情報を基にまとめていき、辿り着いた結論を返すと、『それは違います』といとも簡単に状況が違っていることを示される場合がある。最初から伝えてくださいよという気持ちを押さえてさらに考察するというケースも多い。管理者は考えがまとまっていないから相談しているのであろうから、まとめて書くというのはなかなか難しいと考えられるが、箇条書きでいいからそれらをリストにしてもらってくれているとありがたい。それらがどういう風に役立つのかは考えなくていいと思う。要不要に関わらず持っている情報はすべて吐き出しておくべきである。
 
ページトップへ
10.人に伝える

 最後にこう言った情報をもとにして解決した場合は成功事例として人に伝えることが重要である。同じような問題に悩んでいる人の解決につながるかもしれないし、問題を未然に防ぐことにもつながるであろう。
 
ページトップへ
11.おわりに

 普段排水処理施設の不具合に関して相談を受ける身として現場担当者に実行してほしいことを徒然なるままにまとめた。お役に立てば幸いである。
((株)ダイキアクシス 開発部)
 
 
ページトップへ
前ページへ戻る
| 浄化槽とは | 浄化槽普及促進ハンドブック(令和4年度版) | 行政関連 | 広報データ | プロフィール | 会員専用ページ | リンク集 | コンプライアンス | HOME |
一般社団法人 浄化槽システム協会
〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-32 芝大門ビル5階 TEL:03-5777-3611 FAX:03-5777-3613